吸虫 Trematode

吸虫(吸虫網 Trematoda)には、雌雄異体で中間宿主を1つ必要とする住血吸虫類と、雌雄同体で中間宿主を2つ必要とするその他の吸虫類が含まれる。

肝吸虫 Clonorchis sinensis

肝吸虫は肝臓の胆管内に寄生する柳の葉状の吸虫で、モロコ・モツゴなどの淡水魚を生食することにより感染する。少数寄生ではほとんど症状は出ないが、多数寄生すると胆管を閉塞し胆汁がうっ滞するため、胆管炎や肝機能障害を起こす。写真は虫卵、走査型電子顕微鏡像、下に成虫、第1中間宿主のマメタニシを示す。

横川吸虫 Metaganimus yokogawai

横川吸虫は小腸内に寄生する小形の吸虫で、アユなどの淡水魚を生食することにより感染する。日本でもかなり多くの感染者がみられるが病害は強くなく、通常無症状である。写真は虫卵、第二中間宿主であるカワムツの鱗に寄生するメタセルカリア、下は成虫(カルミン染色)、第一中間宿主のカワニナ、第二中間宿主のアユを示す。

異形吸虫 Heterophyes heterophyes

異形吸虫は横川吸虫によく似た吸虫で、同様に小腸に寄生し、病害も強くない。ボラなどの汽水域に生息している魚介類から感染する。写真は成虫を示す。

Centrocestus armatus

本吸虫は異形吸虫に属する小吸虫で、東南アジアをはじめ日本各地に分布する。主に鳥を終宿主としているが、オイカワやカワムツなどを生食することでヒトも感染する。病害は横川吸虫に似て強くない。写真は虫卵、セルカリア、下にメタセルカリア、成虫(カルミン染色)を示す。

ウェステルマン肺吸虫 Paraganimus westermanii

ウエステルマン肺吸虫はラグビーボール状の大型の吸虫で、主として肺に寄生する。ヒトはモクズガニなどを生食することにより感染する。症状は咳、血痰、微熱などで肺結核と非常に似ており、その鑑別が重要である。
 写真は虫卵、走査型電子顕微鏡像、下に成虫(カルミン染色)、成虫の卵巣(宮崎肺吸虫との違いに注意)、第二中間宿主のモクズガニを示す。

宮崎肺吸虫 P. miyazakii

宮崎肺吸虫は本来イタチなどを固有宿主とする吸虫で、それらの肺に寄生している。ヒトはサワガニの生食により感染し、胸水貯留や気胸、好酸球増多などの症状を呈する。写真はミラシジウム(微分干渉像)、サワガニの肝臓より取り出したメタセルカリア、下に成虫(カルミン染色)、成虫の卵巣(ウェステルマン肺吸虫との違いに注意)を示す。

大平肺吸虫 P. ohirai

大平肺吸虫はネズミやイタチなどを固有宿主としており、ヒトへの感染はないと思われていたが、疑わしい例が数例報告されている。第一中間宿主は貝の一種であるムシヤドリカワサンショウで第二中間宿主はクロベンケイやベンケイガニなどである。写真はクロベンケイ、メタセルカリア(クロベンケイの肝臓より採取)、下に虫卵、成虫の走査型電子顕微鏡を示す。

肝蛭 Fasciola hepatica

肝蛭は木の葉状の吸虫で、ヒトおよび草食獣の肝臓に寄生する。ヒトはメタセルカリアの付着したセリや幼虫のいるウシの肝臓を食べることにより感染する。主症状は心窩部痛・右季肋部疝痛・発熱・肝腫大で、好酸球増多も著しい。写真は中間宿主のヒメモノアラガイ、虫卵を示す。

壺型吸虫 Pharyngostomum cordatuma

壺型吸虫は小型の吸虫で、壺のような形をしていることからこの名がついた。ネコを固有宿主とし、小腸に寄生する。ヒトへの感染はまだ報告されていない。写真はネコの小腸に寄生している成虫(小さな粒々がそうである)、虫卵を示す。

日本住血吸虫 Schistosoma japanicum

日本住血吸虫は雌雄異体で一見線虫のような形態をしており、門脈系の血管に寄生している。ヒトはセルカリアのいる水に触れることで経皮感染する。病害はやや強く、急性期には赤痢・発熱・肝腫大、慢性期には肝硬変・腹水・貧血などを起こす。写真は虫卵、中間宿主のミヤイリガイを示す。

マンソン住血吸虫 S. mansoni

マンソン住血吸虫は日本住血吸虫とよく似た吸虫で、門脈系の血管に寄生している。大きさは日本住血吸虫に比べやや小型である。症状は比較的軽症である。写真は虫卵(走査型電子顕微鏡)肝組織中に塞栓した虫卵(H-E染色)を示す。

ビルハルツ住血吸虫 S. haematobium

ビルハルツ住血吸虫は他の住血吸虫とは異なりヒトの膀胱の静脈叢に寄生する。したがって虫卵は尿中より検出される。写真は、虫卵を示す。
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