線虫は蠕虫類(線虫網 Nematoda)の中で最も進化したグループで、雌雄異体である。また、線虫の生活史において、中間宿主の数は0(回虫など)から2つ(顎口虫)と様々である。
蛔虫 Ascaris lumbricoides
蛔虫はヒトを固有宿主とし、成虫は小腸上部に寄生する。症状は比較的軽いが、稀に胆管などへ迷入することがあり、この場合重症となる。写真は受精卵と変形した不受精卵。下は幼虫包蔵卵、成虫、成虫頭部口唇(走査型電子顕微鏡)を示す。
イヌ蛔虫 Toxocara canis,ネコ蛔虫 T. cati
写真はイヌ蛔虫卵(幼虫包蔵卵)、イヌ蛔虫の成虫(上:メス、下:オス)を示す。
アニサキス Anisakis sp.
アニサキスはイルカやクジラなどの海棲哺乳類を終宿主とする蛔虫で、我が国ではサバやイカなどの生食による感染が多数報告されている。この虫も幼虫移行症の原因種で、激しい腹痛を引き起こす。写真左上にサバの内臓表面に見られるアニサキス幼虫、右上にサバから取り出したアニサキス幼虫、また下にアニサキス断端(HE染色)を示す。
鉤虫 Hookworm
ヒトにとって重要な鉤虫にはアメリカ鉤虫Necator americanusとズビニ鉤虫Ancylostoma duodenaleがあり、共に貧血を主徴とするが、後者の方が重症となる。したがって両種の鑑別は重要であり、鑑別には糞便培養法を用いる(虫卵では鑑別不可能)。写真は虫卵を示す。東洋毛様線虫 Trichostrongylus orientalis
東北地方などの寒冷地に分布し、多数寄生の場合に腹痛・下痢を主徴とする。虫卵は鉤虫卵と類似しているため、鑑別には糞便培養法を用いる。(新鮮便では、鉤虫卵は4細胞卵、東洋毛様線虫卵では16-32細胞卵である。)糞線虫 Strongyloides stercoralis
東洋毛様線虫とは対称的に、糞線虫は奄美・沖縄に分布する。主症状は下痢で、特にAIDSなどの免疫不全時には自家感染を起こすため重症となる。通常糞便中には幼虫が排泄され、鑑別には糞便培養法を用いる。写真は幼虫包蔵卵、ラブジチス型幼虫(R型)、下にフィラリア型幼虫(F型)、成虫(曲がりがあるもの)を示す。
鞭虫 Trichuris trichiura
鞭虫はその名のごとく鞭の形をしている。成虫は盲腸に寄生し、多数寄生では腹痛・下痢を主徴とする。虫卵はグラタン皿様の独特の形態を示す。写真は虫卵、成虫(細くなっている方が頭側)を示す